最新の診断基準および分類基準
REFERENCE
2020改訂 IgG4関連疾患包括診断基準
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臨床的及び画像的診断
単一✴︎または複数臓器に特徴的なびまん性あるいは限局性腫大、腫瘤、結節、肥厚性病変を認める(✴︎リンパ節が単独病変の場合は除く) -
血清学的診断
高IgG4血症 (135mg/dL以上) を認める。 -
病理学的診断
以下の3項目中2つを満たす。- 著明なリンパ球、形質細胞の浸潤と線維化を認める
- IgG4陽性形質細胞浸潤:IgG4/IgG陽性細胞比40%以上かつIgG4陽性形質細胞が10/HPFを超える
- 特徴的な線維化、特に花莚状線維化あるいは閉塞性静脈炎のいずれかを認める
- 123を満たすもの
- 確定診断群(definite)
- 13を満たすもの
- 準確診群(probable)
- 12を満たすもの
- 疑診群(possible)
できる限り組織診断を加えて、各臓器の悪性腫瘍や類似疾患と鑑別することが重要である。
- 悪性腫瘍
- 癌、悪性リンパ腫など
- 類似疾患
- Sjögren症候群、原発性/二次性硬化性胆管炎、キャッスルマン病、二次性後腹膜線維症、多発血管炎性肉芽腫症、サルコイドーシス、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など
また、比較的生検困難な臓器病変で、十分な組織が採取できず、本基準を用いて臨床的に診断困難であっても各臓器病変の診断基準を満たす場合には診断する。
- 臓器病変
- 膵、胆道系、中枢神経、後腹膜、血管病変など
文責 梅原 久範
The 2019 American College of Rheumatology and European League Against Rheumatism Classification Criteria for IgG4-Related Disease
1.はじめに
IgG4関連疾患(IgG4-related disease; IgG4-RD)の診断には本邦の包括診断基準が広く使用されているが、病理組織が得られず疑診(possible)に留まる症例や、明らかにIgG4-RDとは異なる臨床像でありながら血清IgG4値や組織に浸潤するIgG4陽性形質細胞数だけからIgG4-RDと診断されている症例が少なからず存在する。近年アメリカリウマチ学会(ACR)では、患者個々の診断に用いる診断基準(Diagnostic criteria)ではなく、研究や治験を目的とした均一な集団の抽出を目的とした分類基準(Classification criteria)の作成を推進している。その目的から、多少感度は落ちても高い特異度をめざす基準である。
2.IgG4-RD Classification Criteriaの作成
Harvard大学、リウマチ学のStone教授が、北米、ヨーロッパ、日本のIgG4-RD エキスパートに呼びかけ、2016年春にACR/EULAR IgG4-RD Classification criteria作成委員会(総勢24名、日本人9名)を立ち上げた。
まず委員会メンバーの話し合いによりEntry, Exclusion, Inclusion criteriaを抽出。その後世界各国からインターネットを通じで実際の症例(IgG4-RDとmimicker)を集積し(deviation cohort486例; IgG4-RD 272, mimicker 214)、その結果からInclusion criteriaの項目の選定、重みづけを仮に設定。その後ふたたびメンバーが集合し、どの項目がよりIgG4-RDらしいかについて合意形成(delphi法)を行い、1000Mindsというコンピューター解析ソフトにより各診断項目の重みづけ、分類の閾値を設定した(Multi-Criteria Additive Points System)。そのように作成された分類基準について、2回のvalidation study(1回目cohort 908例、2回目cohort 485例)が行われた結果、感度82.0-85.5%、特異度97.8-99.2%を示し、2019年9月にACR、ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)両学会から承認された。
3.Classification Criteriaによる分類の実際
臨床上IgG4-RDを疑う病変を認める症例(Entry Criteria; 表1)をエントリーし、そのうちExclusion criteria(表2)に該当するものは除外する。IgG4-RDでは痛風における尿酸結晶のようなAbsolute criteriaは存在しないため、その後8つのドメインからなるRelative Criteria (表3,4)のうちどの項目が該当するかを評価する。各ドメインの所見には重みづけがなされており、20point以上の症例がIgG4-RDと分類される。
文責 佐伯敬子、梅原久範
Entry Criteria |
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典型臓器における特徴的な臨床像、放射線学的な所見あるいは病理学的所見 |
膵臓 |
唾液腺 |
胆管 |
眼窩 |
腎 |
肺 |
動脈 |
後腹膜 |
肥厚性硬膜炎 |
甲状腺(Riedel’s甲状腺炎) |
Exclusion Criteria | |
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Clinical | |
発熱 | |
ステロイド不応性 | |
Serological | |
原因不明の白血球減少、血小板減少 | |
好酸球増多 | |
ANCA 陽性 (PR3- or MPO-) | |
抗SS-A (Ro) or SS-B (La) 抗体陽性 | |
抗dsDNA抗体、 抗ribonucleoprotein抗体 or 抗Smith (Sm)抗体陽性 |
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他の特異的自己抗体 | |
Cryoglobulinemia | |
Radiology | |
明らかな腫瘍像、感染症像 | |
急速な進行変化 | |
長管骨異常(Erdheim-Chester disease) | |
Splenomegaly | |
Pathology | |
腫瘍浸潤 | |
inflammatory myofibroblastic tumor | |
好中球による炎症像 | |
壊死性血管炎 | |
著明な壊死 | |
肉芽腫像 | |
単球・組織球による異常 | |
既存疾患 | |
Multicentric Castleman’s Disease | |
Crohn disease or Ulcerative Colitis |
Inclusion Criteria | Score | |
---|---|---|
病理 | Uninformative biopsy | 0 |
著明なリンパ球、形質細胞浸潤 | 4 | |
著明なリンパ,形質細胞浸潤と閉塞性静脈炎 | 6 | |
著明なリンパ、形質細胞浸潤とstoriform fibrosis | 13 | |
免疫染色 | 別表4 | 0-16 |
血清IgG4値 | > Normal or not checked | 0 |
> Normal but < 2x Upper Limit of Normal | 4 | |
2x to 5x Upper Limit of Normal | 6 | |
≥ 5x Upper Limit of Normal | 11 | |
両側涙腺、耳下腺、舌下、顎下腺 | No set of glands is involved | 0 |
1セット | 6 | |
2セット | 14 | |
胸部 | 所見なし | 0 |
気管支血管束と小葉間隔壁の肥厚 | 4 | |
胸椎周囲を取り巻くバンド状の軟部組織 | 10 | |
膵、胆管 | 所見なし | 0 |
膵腫大 | 8 | |
膵腫大+capsule-like rim | 11 | |
上記膵臓所見+胆管病変 | 19 | |
Kidney | 所見なし | 0 |
低補体血症 | 6 | |
腎盂壁肥厚 | 8 | |
両側の腎皮質低吸域 | 10 | |
Retroperitoneum | 所見なし | 0 |
腹腔大動脈周囲の肥厚 | 4 | |
下行大動脈、腸骨動脈周囲の軟部組織 | 8 |
上記の合計点が20点以上の場合にIgG4-RDと診断する。
IgG4 + Cells/HPF | |||||
---|---|---|---|---|---|
0 to 9 | indeterminate | 10 to 50 | >50 | ||
0 to 40% | 0 | 7 | 7 | 7 | |
indeterminate | 0 | 7 | 7 | 7 | |
41 to 70% | 7 | 7 | 14 | 14 | |
>70% | 7 | 7 | 14 | 16 |
IgG4関連腎臓病診断基準2020
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尿所見、腎機能検査に何らかの異常を認め、血液検査にて高IgG 血症、低補体血症、高 IgE 血症のいずれかを認める。
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画像上特徴的な異常所見(びまん性腎腫大、腎実質の多発性造影不良域、単発性腎腫瘤(hypovascular)、腎盂壁肥厚病変)を認める。
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血液学的に高 IgG4 血症(135 mg/dL 以上)を認める。
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腎臓の病理組織学的に以下の 2つの所見を認める。
- 著明なリンパ球、形質細胞の浸潤を認める。ただし、IgG4陽性形質細胞が IgG4/IgG 陽性細胞比 40 %以上、あるいは10/hpf を超える。
- 浸潤細胞を取り囲む特徴的な線維化を認める。
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腎外病変
- 腎臓以外の臓器の病理組織学的に著明なリンパ球、形質細胞の浸潤と線維化を認める。ただし、IgG4 陽性形質細胞が IgG4/IgG 陽性細胞比 40 %以上かつ 10/hpf を超える。
- 腎臓以外の臓器において以下の臨床・画像所見のいずれかを認める
- 1) 両側涙腺腫脹
- 2) 両側顎下腺あるいは両側耳下腺腫脹
- 3) 1型自己免疫性膵炎に合致する画像所見
- 4) 後腹膜線維症の画像所見
Definite:
134a4b
234a4b
235a
134a5aor5b
234a5b
Probable:
14a4b
24a4b
25a
235b
Possible:
13
23
14a
24a
25b