IgG4関連腎臓病診断基準改訂のお知らせ
IgG4関連疾患 (IgG4-related disease; IgG4-RD) の診断について、日本では厚生労働省IgG4-RD研究班からIgG4-RD包括診断基準(2020年改訂)が発表されています。しかし、傷害臓器によって診断に有用なツールが異なることから、臓器別診断基準も作成されており、両者を合わせて用いることにより、より正確に診断できる仕組みになっています。IgG4-RD診断の第一歩は臓器の腫大などの臨床、画像所見ですが、腎臓では臓器の腫大を伴わず腎機能低下や尿異常などが発見のきっかけになることも多いことから、日本腎臓学会IgG4関連腎臓病 (IgG4-related kidney disease: IgG4-RKD) ワーキンググループは2011年にIgG4-RKD診断基準を作成しました。
この診断基準は、何らかの腎障害を認め、かつ高IgG血症、低補体血症、高IgE血症のいずれかを認める場合、血清IgG4値、腎画像異常、腎組織所見、腎外病変を総合して診断していくものです。IgG4陽性形質細胞浸潤はIgG4-RKD以外の腎病変でも認められ得ることから、2011版診断基準では、生検で診断されたIgG4関連腎外病変を欠く症例では腎組織でIgG4陽性形質細胞浸潤と、花筵状線維化、両方の所見がないとIgG4-RKDと診断しない、と設定されました。しかし、今回この診断基準の検証を行ったところ、真のIgG4-RKDであっても花筵状線維化を欠く症例が45%程度あったことから、この基準は特異度に優れるものの、感度が低いことが明らかとなりました。
ACR/EULARのIgG4-RD分類基準でも示されたように、IgG4-RDにはIgG4-RDを強く示唆する臨床、画像所見が存在します。そこで、腎外病変として組織学的に証明されたもの以外に、IgG4-RDを強く示唆する臨床、画像所見 (① 両側涙腺腫脹、② 両側耳下腺または顎下腺腫脹、③ 1型自己免疫性膵炎に合致する画像所見、④ 後腹膜線維症に合致する画像所見、のいずれか)を追加したところ、特異度はそのままで感度が上昇した改訂版を作成することができました(感度 90.9%; 特異度 90.0%)。
新たにアルゴリズム2020版も作成し、日常診療に使いやすようになっております。英語版はCENに、その日本語訳版は日腎誌に掲載されておりますのでご一読いただければ幸いです [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33398598/, Validation of the diagnostic criteria for IgG4-related kidney disease (IgG4-RKD) 2011, and proposal of a new 2020 version. Clin Exp Nephrol. 2021;25:99-109. IgG4関連腎臓病診断基準2020(IgG4関連腎臓病診断基準2011改訂版), 日腎会誌2021年63巻2号] 。
文責 佐伯敬子
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